オーガニックコットンを使った久留米絣着物が文部科学大臣賞を受賞しました。
【受賞作家 森山哲浩さん】

第58回日本伝統工芸展
の入賞が8月24日に決まり、東京日本橋三越本店で9月21日から10月3日まで受賞作品の展示が始まりました。
昭和25年に文化財保護法が施行され、価値の高い工芸技術を国として保護育成することになりました。昭和29年以来今年で58回を数える重要な国家行事です。
強烈な15号台風の最中、飛行機で福岡から会場に駆けつけた森山哲浩さんにお祝いとお礼を申し上げたくて出掛けました。
台風の激しい風雨の中、怖ろしい飛行の直後の森山さんですが、飄々と落ち着いた様子でお話を聞かせてくれました。お父さんの作品の絣のジャケットを颯爽と着こなされていました。文化庁の担当官の佐々木さんも立ち寄られ、興味深い伝統工芸の世界を垣間見ることができました。

伝統工芸の世界では近年、華麗な絹織り物よりも、生活に根ざした綿や麻の「用の美」を奨める傾向があるようです。この点では森山さんの久留米絣の作品は最も相応しく、本藍染めオーガニックコットン素材の組み合わせで「エコロジー」「フェアトレード」「伝統技術の伝承」と正にエシカルのテーマがそっくり揃った素晴らしい出来栄えという事も出来ます。

オーガニックコットンの使い勝手について尋ねて見ると、しなやかさがあり、染めについても手応えがあり、今までの綿糸との違いを認め、とても気に入っていただいたようです。今後も使っていくという嬉しい言葉を伺いました。

受賞作品「おぼろアラレ」は濃い藍染の地に白い糸と淡い藍染の糸であられ模様が構成されています。深みのある地色に白く抜けた枡の形の模様に添って淡い青の枡が配され、豊かな奥行きを感じさせます。伝統の柄から進化させたモダンな風合いが、森山さんの更なる意欲を見せています。森山さんの家系は、代々久留米絣織りを継承していて、人間国宝の祖父重要無形文化財保持者の両親に継いでいます。

絣は、もともとインドが発祥で、タイやカンボジア、インドネシアやベトナムを経由して琉球・沖縄に伝わりました。1800年頃、当時の筑後国久留米藩がいち早くこれを採り入れ、殖産奨励して絣生産は繁栄しました。
絣の着物は、丈夫で洗い込んでも傷むことがなく「一生もの」で、生活着としてボロボロになるまで馴れ親しまれてきました。
絣は、柄が小さいほど、手間が掛かり、高度な技術が要求されます。そこで作者は、美しく細かい模様を競い合ってきました。デザインを決めて、糸の支度、染めの支度を始めて、完成するまで3か月以上、気を抜くことなく取り組みます。

化学薬品で染めて機械にセットして出来を待つという「生産」とは対局の方法です。すべて天然材手作りの「手工芸」で、自然を相手にするだけに不確定な事態が次から次に起きるのを、淡々とこなしてゆく精神性が森山さんに備わっています。嵐の中を平気で飛んできて何事もなかったように居られる精神的な強さは、絣織物に取り組むところから培われたものなのでしょう。

森山さんの今後の活躍に注目してゆきましょう。

日本オーガニックコットン流通機構
理事長 宮嵜 道男