毎年テキスタイル・エクスチェンジ(アメリカ)が、オーガニックコットンの市場動向調査と繊維生産の動向調査を行っています。今年も発表されました。

オーガニックコットンの需要は伸びているのに、肝心の繊維生産量は減少したという結果になりました。

<世界の小売動向>

Euromonitor International apparel Researchは、世界的な景気の不安定さがあっても2011年以降、アパレル小売売上高は伸びてきており引き続き伸びてゆくとしています。

2011年の世界の小売売上高の成長率はプラス5.1%で、$ 1513,1billion

(151兆3000億円)となっていて、楽観的にはこの傾向は2016年まで続くと見ています。

西ヨーロッパが不調と云っても、中国は相変わらずの高い成長を示していて世界平均すると緩やかな上昇基調にあるということです。

多くの消費者は安物を追いかける傾向が強いと云われていますが、小売価格が

上がり気味でも高額品の売り上げは、堅調な点は注目です。

<オーガニックコットンの世界市場>

2011年 62億ドル(6200億円、100円/$)

2012年 89億ドル 予測

<オーガニックコットン生産量の年次推移>

2005-06年      37,799トン

2006-07年      57,731トン

2007-08年     145,872トン

2008-09年     209,950トン

2009-2010年    241,697トン

2010-2011年    151,079トン

2011-2012年    138,813トン

2012-1013年    136,000トン      (予測)

世界のオーガニックコットンの生産量が138,813トンで昨シーズンから37%も減少した結果となりました。

その経緯は以下の通りです。

・  インドは、世界のオーガニックコットン生産量の70%を占める超大国である。インドの生産量の増減が、そのまま世界の生産量の増減を表す規模である。そのインドで、GMOコットンの蔓延で種の汚染が広がり、苦戦したが、何とか例年の量を維持した

世界のオーガニックコットン生産量にインドが占める割合: 74%

(102,452mt→103,004mt)

・  シリアはずっとインドに次ぐオーガニックコットン生産大国だった。  (昨シーズン16,000トン生産)ところが先のチュニジアのジャスミン革命などに触発されて、2011年1月にアサド政権打倒の革命を目指す反政府軍が蜂起して内戦状態になった。すでに7万から8万人の犠牲者が出ている。このような状況下で、認証作業はできるはずもなく、今回のこのレポートでは、加算されなかった。

・  アメリカの干ばつ  栽培面積を36%広げたが、3分の2の地域で干ばつに襲われ45%の生産減。                        (繊維量、2,893mtが1,580mtになった)

・  アフリカは全体で103%の伸長をみた。特にタンザニアは、雨がいい時期にたっぷりと降ったので昨年比153%増を果たした。

アフリカの生産量のタンザニアが占める割合: 77%          (2,723mt→6,891mt)

・  トルコは、耕作面積を広げて64%増産できた。            (9,613mt→15,802mt)

・  ニカラグアは、他の国と比べると一段小規模であるが、CAPROEXNICという推進組織が奮闘して190%伸ばした。      (42mt→122mt)

その他のデータ>

・生産国                       18か国

・オーガニックコットン耕作地面積                316,907ha

・オーガニックコットン農家の数                  214,90

・昨シーズンから増産させた国の比率                 50%

 

 

国名 繊維生産量 mt 全体に占める割合 %
1 インド 103,003.52 74.20
2 トルコ 15,802.00 11.38
3 中国 8,105.53 5.84
4 タンザニア 6,890.90 4.96
5 アメリカ 1,580.00 1.14
6 マリ 860.00 0.62
7 ペルー 478.50 0.34
8 ウガンダ 455.70 0.33
9 エジプト 420.00 0.30
10 ブルキナファッソ 370.00 0.27
11 ベニン 328.00 0.24
12 キルギスタン 156.00 0.11
13 ニカラグア 122.00 0.09
14 パラグアイ 100.00 0.07
15 イスラエル 70.00 0.05
16 ブラジル 37.79 0.03
17 セネガル 17.13 0.01
18 タジキスタン 16.00 0.01
Total 138,813.30

 

エコロジーコットン・ニュータイプ

オーガニックコットンに対してサステナブル・コットンという新たなタイプのコットンがあります。「サステナブル」は、持続可能性と訳され、子々孫々に良好な地球環境を残してゆくという考え方です。

これは、オーガニックコットンの認証とその認証基準の厳しさについてゆけないが、かといって従来のコットンとは違い、一歩エコロジーに配慮したものがあってもよいという発想から出来てきました。

オーガニックをベスト(もっともよい)とすると、ベター(より良い)な選択を提供するものです。具体的には、「フェアトレードコットン」と「アフリカ産コットン推進」と「BCI(ベター・コットン・イニシアティブ、より良いコットン提唱)」です。

BCI以外は遺伝子組み換えGMOコットンを忌避していますが、証明関係は整備されていないので、自称エコ推進者の域を出ていません。大手アパレルメーカーにとっては、少しでも社会的な善行をアピールしないと消費者の支持を得にくいため、当初オーガニックコットンに参入していた大手ブランドも商売の採算を天秤にかけてこのサステナブル・コットンに移行したケースがあり、企業イメージを維持するための駆け込み寺的な存在になっているようです。

やっと広がったオーガニックコットンの市場が食い荒らされるのではないかと憂慮しています。

幸い、日本ではほとんど注目されず、今のところは、脅威として感じてはいません。それでも、似たようなものが蔓延して、安売り合戦になって、オーガニックコットンファンの皆さんが、嫌気を感じて気持ちが離れるとしたら大変困ったことです。

<農業者の立場>

ただ、農業者の立場からすると理解できる面はあります。

例えば、春に栽培する作物を選ぶときに、何を植えたら儲かるかと当然考えます。従来、オーガニックコットンは引き取り価格が高かったので、利益的な作物でした。ところが、一般綿の価格が高騰してくると、オーガニックコットンとの価格差がなくなります。そしてオーガニックの認証の検査やら、記録の整備、認証コストなど農業者にとっては確かに不利な作物と云うことになります。そうすると、農業者の選択はオーガニックから離れます。

インドのビオリプロジェクトのように、買い付け保障や上乗せ価格を仕組みとして持っているところでは安定していますが、そうでないところは、あくまでも営利を追求しがちになります。そこに持ってきて、GMO遺伝子組み換えの種が大半を占めるようになって、オーガニックコットン認証を取るためには、種の検査は厳しく、GMOでない種の仕入れそのものに苦労するようになってきました。

それならベストのオーガニックコットンではなくベターな方法で栽培したいというのは極く、自然な選択になります。

オーガニックコットンの現状

 現状を改めて、見てみるとオーガニックコットンの認証手続きは、面倒でコストが掛かるため、ベターな選択という安きに流れようとする大手のアパレルの意図が見えます。農薬の使用量も減らず、GMOの種も拡大基調です。

 未来の世代の安全を考えたら、決して望ましい方向ではありません。昨日今日のビジネスの成功、目先の利益のために進んでいるのが現状です。この方向を修正するには、消費者が賢くなることに掛かっています。オーガニック農業において、最も忌避すべきことは、遺伝子組み換えの技術です。この技術は貪欲なビジネスに裏打ちされて、特許による独占と訴訟というおよそ、人類の命の元の食糧生産にそぐわない技術です。

福島原発事故の例を引くまでもなく、この技術も結局人知が遥かに及ばない、人類滅亡につながる、決して手を出してはならない技術です。

 同じように遺伝子組み換え技術も神の領域を侵すものであり、生命体そのものが変異してゆく可能性があり、同じように人類滅亡につながります。

  オーガニックの真髄は、「大自然が与えてくれる産物をそのまま利用し、使用後、戻しても地球環境を傷めない」ということで、子々孫々、永続できる正に未来的な先進農業です。

 掛け買いのない地球を何よりも優先するということは、人類が唯一、生き永らえる方法と気付かなくてはなりません。

平成25年5月30日                          宮嵜道男

日本オーガニックコットン流通機構