日本では、一般的に汚れた水と云えば「茶色」をイメージします。英語では「gray・灰色」です。もう捨てるしかない下水はブラックウォーター、再生が出来そうな汚水はグレーウォーターと云うことになります。

英語はいつもながら論理的です。

Water Footprint Networkという組織がウォーター・フットプリントという考え方を広めています。フットプリントは、足跡(あしあと)のことで、生産された製品が使った水の量を足跡として環境負荷の認識をさせようとする考え方です。

きれいな絨毯の上に付いた泥汚れの靴跡は困るという感覚が英語圏の国にあるのでしょうか。我々日本人は家の中では靴を脱ぐので、特に足跡を気にすることはありません。

さて、水の呼び名は更に厳密になります。

ブルーウォーター・フットプリント:作物、製品に取り込まれた表流水(川、湖)や地下水の量。                                                      グリーンウォーター・フットプリント:雨水のうち、作物に取り込まれた量と土壌中に蓄えられた水の量。                                                  グレーウォーター・フットプリント:水の汚染を示す指標で、汚染された水を環境水質基準のレベルまで薄めて、どれだけの水を使うかを算出したもの。年間何立方メートルの容積の水で表し、数字が大きい程、汚れが酷いということになる。

製品ごとの水の使用量を比較した面白いデータがあります。

300円くらいのファーストフードを比較したデータ

東京大学沖大幹氏資料より

素うどん 玉子付きそば ハンバーガー

ポテト付き

牛丼
290円 300円 268円 280円
341 kcal 377 kcal 745 kcal 710 kcal
120リットル 750リットル 2020リットル 1890リットル


      *牛肉のウォーター・フットプリントは、破格に大きいことが判る。

<コットンのウォーター・フットプリント>

コットンのTシャツ一枚のウォーター・フットプリントはどれ程か?

それがなんと2700リットルという大きい数字になります。

コットンは、もともと乾燥地で育つ作物でしたが、高収量の種の改良を続けてきた結果、「肥料の大食い、大量の水飲み」の品種に変わってしまいました。品種によっては、4倍も収量が増加した例があり、こうなると脇目も振らず、収量の向上を最優先に考えてしまう訳です。

但し、「大食い、水飲み」の改良綿花は、長期的に土壌や水を資源として見る立場からするととんでもなく効率の悪い品種ということになります。

・世界の綿花畑の53%が灌漑を使っています。(ITC)

・オーガニック綿の畑では75~80%が天水(雨水)を利用しています。

 ここに「20世紀最大の環境破壊」と呼ばれる、酷い失策があります。

旧ソ連(現カザフスタン)は、1960年台に世界第4位の水面積を誇っていたアラル海

2000年にはわずか15%の水量にしてしまいました。

アラル海に流れ込んでいたアムダリヤ川  (アム川)とシルダリヤ川(シル川)の水を綿花栽培用の灌漑用水に無計画に取水した結果、アラル海を干上がらせ、豊かな水産資源で生きてきた漁民を追放し、不毛の砂漠地帯にしてしまいました。

同じようにアフリカ南スーダンのチャド湖も周辺諸国による大規模灌漑の影響で消滅の危機にあります。周辺地域は飢餓と紛争に明け暮れる結果となっています。

石油がもとで紛争が起きてきた20世紀ですが、21世紀は水の争奪戦が激化すると言われています。既に中南米、アフリカ、中東、インド、東南アジアで水紛争が起きています。

C&A/慣行農業と有機綿の水資源の負荷についての調査>

ドイツのファッションメーカーC&A社が、コットン畑から出る排水の汚染について調査を発表しています。慣行農法の綿花とオーガニック綿花の排水の環境負荷を比較しています。

比較するパラメーターとして、上記のフットプリントの考え方を使っています。

C&Aは、2011年から自社の原料の綿の40%を供給するインドで調査を始めました。GujaratとMadhya Pradeshの二か所の地域から240の慣行農家と240のオーガニック綿農家を対象にしました。

殺虫剤や除草剤などの農薬や窒素分の化学肥料がどのように水質を汚染しているか調査しています。有機農業での堆肥の窒素分やリン酸の水汚染の負荷を検証しています。

 

比較表                                                GWF:Gray Water Footprint

  対象農地(エーカー) 綿花収穫量 年間のトン数 単位面積当たり収穫量   トン/エーカー

 

GWF合計  (㎥/年間) 平均GWF(㎥/トン)
慣行農業 1272 653 0.50 168,951,583 266.042
有機農業 1272 577 0.45 30,703,437 53.257

*慣行農業と有機農業で、農地の面積を1272エーカーに決め、その面積で収穫された量を比べると慣行農業の方が、11%収穫量が高かった。面積当たりの収穫効率も10%多かった。                                                     *GFW/グレーウォーター・フットプリントの年間量は慣行農業が約1億6千8百万㎥で有機農業は3千万㎥と算出され、5.6倍も慣行農業の方が汚染しているという結果だった。収穫量トン当たりのGWFも約5倍の汚染という結果になった。                     *慣行農業の汚染の最大の原因は殺虫剤にあり、毒性が無害化するための薄め液としての水の量が膨大になっている。                                     *有機農業で使う害虫に対して忌避効果のある植物などの使用が水を汚染していると数値化されているが、この調査ではその成分が環境面や農業者への悪影響までは突き止められなかった。

調査では、砂糖水でも汚染と捉える訳で、毒性のある農薬の汚染とは元来、別物である点は留意すべきで、有機栽培から出た排水は環境破壊の原因とはならない。

C&Aは、以上のように有機栽培に転換してゆくことの重大性に気付き、2012年にはオーガニックコットンの使用量を78%も増やして、オーガニックコットン導入量世界ナンバーワンになりました。  NOCホームページ参照 http://noc-cotton.org/             年間のオーガニック綿使用量が900トンになる模様です。

オーガニック農業は土壌を健康に保ち、生物多様性を進め、限りある水資源を節約し、汚染をなくし、自然環境を保全します。

そしてそこで働く人々の健康や平和を維持してゆきます。

平成25年11月28日                             NOC  宮嵜道男