424日(木)ナマケモノ倶楽部主催の上映会と辻真一さんのトークショーに出掛けました。

映画は「いのちの種を抱きしめて、ヴァンダナ・シヴァ」で、遺伝子組み換えの種に対して警鐘を鳴らすテーマでした。来場者は、ほとんど女性たちで、未来のあり方について考えるのはやっぱり女性たちなんだなあと感心しました。

映画は、インドで有機農場の「ナヴダーニャ」を運営するヴァンダナ・シヴァさんの語りを丁寧に紹介しています。

 シヴァさんは、チプコ運動に出会い感動して、インドの農民をインドの農業を守りたいという一心で事業を行ってきました。

 「チプコ運動」は、クリケット用のスティックの材料として森の木の伐採権を州政府から得た企業に対して、サリーを着た農村の女性たちが森の木を切らせないように抵抗した運動です。

女性たちは、一本一本の木を抱きしめて、「木を切るなら私たちも一緒に切りなさい」とわが身を投げ出したのでした。チプコとは、ヒンドゥ語で「抱きつく」という意味です。

 インドの人々、とりわけ下層の人たちは、ガンジーの「非暴力、非服従」を唯一の武器にして巨大な勢力に対して、我が身を投げ出して対抗してきた強い人たちです。

 ヴァンダナ・シヴァさんの主張は明確です。

Small is the new Big」小さいことは改めて考えてみると偉大なんだとしています。

これまでの世界は「Big is Big」、なんでも大規模に、効率一辺倒で行われてきた結果、環境汚染と貧困格差をもたらせました。人類社会が幸せになるにはどうしたらよいか?と問いかけます。

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大規模な農業、巨大なダム、国際的大資本の企業達、現在の世界を見渡してみたら、わずか5つの企業に、種子も食料も水も支配されてしまっている。

インドの農民は種まきしながら、「この種がいつまでも尽きませんように」と祈っているその時、世界の種子を牛耳っている大企業は、「わが社の利益が尽きませんように」と祈っている。

農業は命と直結した崇高な事業で、元来個別の企業の利益を求めるようなものではない。

 地域に根差した小規模な農業の方が人々を幸せにする可能性が高い。

大規模で工業的な農業より、小規模農業の方が結果的には生産性が高くなる。

小規模農家の方が土、植物そして、家畜に対して細かい世話ができる。

その結果、豊かな生物多様性がもたらされる。

全世界的にみれば、食料の72%は、小規模農家によって生産されている。

FAO(国連食糧農業機関)

このように、農業の本来の姿は「小規模農業」ということが云える。

 大規模農場では、多くは食物ではなく、バイオ燃料や家畜の飼料用としてトウモロコシや大豆を生産している。せいぜい人が食べるのは10%程度である。

規模を大きくして効率を上げる場合、必ず機械を導入して労働力(人件費)を減らす。機械化によって労働者は、働く場を失い地域住民は貧困化していった。

作業効率を良くするため、単一栽培にする。その為、化学肥料、除草剤、殺虫剤などの農薬を大量に使うようになる。

2012年のILO(国際労働機関)は、「持続可能な開発に向けて」という報告書で小規模農業こそ、環境を保全し、食糧を確保し、雇用を安定化できる有利点があると結論づけている。

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シヴァさんが今、最も力を入れているのが、遺伝子組み換え種子の排除の運動です。

世界的に拡がっている知的所有権保護の流れは、農業の世界では種子に及び、大企業は、遺伝子組み換えGMO種子で世界の農業を独占しようとしています。

現在、世界の種子市場23千億円の32%は、わずか10の会社が支配しています。これらの会社は、殺虫剤、除草剤などの農薬の市場も同時に支配しています。穀物の市場は、カーギル社など、わずか5社によって牛耳られています。そして、このカーギルは、農薬や遺伝子組み換え種子のメーカー・モンサント社と協調して市場のコントロールをしています。

シヴァさんは、食糧の根源である種子が欲得づくの国際企業に食い物にされ、遺伝子組み換え技術が自然の秩序を破壊するモンスターを生み出す可能性を警告しています。

 インドの農民は、受粉の役に立っている蜂のために、戸口に食べ物を置いておいたり、稲刈りの済んだ畑に鳥たちのために米粒の付いた稲を吊るしておいたり、畑の周囲の動植物に目を配り豊かな自然環境を維持しています。

このようにエコロジカルな世界観は、我欲のままに必要以上の自然を消費しないようにして、末永く自然と共に生きられることを優先します。

 国際資本企業は、食料を有利に確保するために、地球上の種子を冷凍保存する巨大な施設を所有しています。ひとたび食糧危機が起きれば、売り手市場で膨大な利益を上げられることを目論んでいます。

一方シヴァさんの行うナブダニャ運動は、地域の農業コミュニティを復活させるために、伝統的な種子、多様な種子を集め、守っています。インドの6州で、16の地域で種子銀行を始めました。

 以上のように、国際資本企業が考える種子とシヴァさんが考える種子には雲泥の差があることが判ります。

では私たちに何ができるのでしょうか?

私たちがこの違いに気付き、シヴァさんの農業を支持したいと思ったら、日常の買い物の際に、有機の農産物を選ぶようにすることです。

消費者の意識が高まり、有機農産物がもっともっと広がると、遺伝子組み換えも、農薬も貧困の問題も解決の方向に向かって回り始めます。

食べ物を買う時に、ちょっとでも手を止めて考える癖をつけてください。

 インドの農村の女性たちが、「チプコ運動」で木を守ったように、私たちも守るべき自然を抱擁する気持ちを持ちましょう。

 平成26年5月13日                NOC 宮 嵜 道 男