(CSRコンサルタント・サスティナビジョン 下田屋毅氏のレポートより)

ラナプラザは、2013年4月24日に倒壊したバングラディッシュの縫製工場のことです。この事故で、1130人を超える死亡、2500人以上が負傷するという最悪の産業事故となりました。

一周年の4月24日に、ロンドン各所で 抗議キャンペーンやイベントが開催されました。場所は、イギリス、ロンドンの中心街・オックスフォード・ストリート沿いにあるアパレル・GAPの店舗の前でした。

参加者は約50人、そしてメディアやその他見物人が取り巻き騒然としました。  そして、この模様はBBC放送が朝のトピックスとして大きく取り上げました。

なぜGAPの前での抗議デモになったのか?

それは、GAPの製品が、この倒壊した縫製工場で生産されて、他のアパレルが、ラナプラザの被害者への補償をしているのに、GAPは対応せず、被害者支援の団体への参加も拒否しているからでした。

このキャンペーンでは、GAPの店舗の前に人の鎖を作り、「ラナプラザ・ネバー・アゲイン:二度とラナプラザの悲劇を起こさない」と参加者全員でのシュプレヒコールで訴えました。

また、その後、この一団は、同じくロンドン中心街のオックスフォード・サーカスにあるイタリアのアパレル企業である「ベネトン」の店舗前に移動して、店舗の入口を閉鎖するなどして訴えました。ベネトンは、営業をストップせざるを得ませんでした。ベネトンもラナプラザからの調達企業の一つでした。「アコード」と呼ばれる建物の安全に関する協定には署名していましたが、被害者とその家族への補償金の支払いをしていなかったので、メディアやNGOから非難を浴せられていました。

また、もう一つの運動は「ファッション・レボリューション・デイ」で、イギリスを中心に世界にネットワークを持つ組織で、4 月24日に自分の服を裏返しに着て、写真に撮り、どこの企業の製品か強調し、それをツイートして告知するというものでした。

以上二つのアクションは、「綿花生産や縫製など衣服製造に関わること」をエシカルでサステナブルなものとして根本から変えて行こうとするものです。

消費者は、商品が安いからいいのではなく、それを「誰がどこでどのように作っているのか」までを知って買う、という倫理的な価値観を求められてきています。

そして企業は、自社のサプライチェーンの中で、製品や部品を「誰がどこでどのように作っているのか」について重大な責任があるということを、自覚しなくてはなりません。

前出の協定・アコードは、「バングラデシュにおける火災予防及び建設物の安全に関する協定」で、参加しているのは、ファッション企業のプライマーク、H&M、マークス&スペンサーなどの欧州企業の他、アメリカ企業16社、日本ではファーストリテイリング(ユニクロ)を含み159社に及びます。

イギリスのファッション企業プライマーク社は、事故発生後の対応に対して良い評価を得ています。同社は、ビル倒壊後、ローカルサポートチームを設置して、被害者と遺族に対する長期補償900万米ドル(9億円)を支出し、さらに追加で100万米ドル(1億円)を「ラナプラザ信託基金」に寄付しています。「アコード」への署名もしています。

2014年1月に、ILOを被信託人として犠牲者に対する基金として、「ラナプラザ信託基金」ができました。全ての企業・組織・個人からの寄付を取り付けて、1,500万米ドル(15億円)になりました。しかし、必要な補償金額は4,000万米ドル(40億円)でまだまだ及ばず、寄付がさらに必要です。

安さを求めて手を抜いて、そのために事故が起きると、蓄積してきた利益も信用も名声もすべて失い、高くつくことになります。

このところ利益優先して事故になった事件が世界中で頻発して、資本主義新自由主義のやり方への疑問が噴出してきています。

もう一度、何が大事か考え直す時代が来ています。

平成26年5月16日                 NOC 宮 嵜 道 男