ブランドがいいか、ブレンドがいいかコットンに限らず、お米や、コーヒー、お酒で、いつも問われています。

お米で言えば、「あきたこまち」や「こしひかり」といったブランド米に対して色んな産地の米、新旧の米を一定品質に混合調整したのがブレンド米です。
コーヒーでもブルーマウンテン、キリマンジャロに対してミックス混合したのがブレンドコーヒー。ブレンドは、味に当たり外れのない万人向き、無難というのが特長です。

さあコットンではどうでしょう。ここにスイスのパートナー会社からの一通のお詫びの手紙があります。オーガニックコットンの糸を加工する会社の責任者から来た手紙の内容です。

2005年のインド産のオーガニックコットンの収穫の最終段階の綿の繊維の長さが予定より短く、糸の品質が劣る可能性があり、
誠に残念ながら一部ウガンダ産のオーガニックコットンを混ぜます。
純粋性を貫くオーガニックの精神から外れることであり、あってはならないことは十分に承知しています。
今後とも純粋性を守る努力を惜しみません。この度の件は例外としてご了承ください。

繊維の検査を専門に行う機関によると、綿に綿をいくら混ぜても混ざったものから、混合の比率を割り出すことは不可能とのことです。このスイスのメーカーは黙って一定品質のオーガニック綿糸を供給してもなんら問題にはならないことですが、このように深い罪悪感を感じながらの手紙になったのです。

日本の一般的な綿糸加工の常識からすれば、何もそこまで産地にこだわることはないのではないか。要は、混合しても安定した品質の綿製品を供給すればよい、ということになります。

世界のオーガニックコットンの生産者の常識とここが異なります。「日本の常識は世界の非常識」と各方面で言われていることですが、コットンの世界にもあることでした。

オーガニックコットンは、大体多めに見て年間一万トン獲れています。これに対して一般綿は約2000万トン。比率にしてわずか0.05%という希少な特別な綿原料ということになります。このわずかな原料を前にして、大きくふたつの考え方に分かれます。

需要を伸ばし、世界のオーガニック農場を増やし、農薬の害を減らそう。そのためには大量に売らなくてはならない。色んなものと混ぜて価格を下げ、売れるように、色を付け柄を付け、巨大消費市場の真ん中に持ってゆく。ナイキ、パタゴニアなどの大手企業がこの考え方で展開しています。

もう一つの考え方は、混ぜたら絶対に見分けが付かなくなる素材ならば、徹底的に素材の正統性、純粋性を追求しないと、オーガニックコットンそのものの価値観が雲散霧消してしまう。そこで、純粋、安全の規準を作りオーガニック精神を製品に具現化しようというものです。

NOCグループは後者の立場で、展開しているグループです。オーガニック原綿や綿糸生産の背景について第三者の機関が認証していることを最も重要な要素にしています。

産地ごとの綿花から糸になったものを扱うわけですが、これはリスクを伴うことでもあります。綿は言うまでもなく農産物です。その年年の気候が頼りで、年毎に品質が異なります。去年は質がよかったが今年のものはちょっと落ちるなんていうこともあるわけです。

一般の消費者が、製品の、その違いを見分けることは出来ませんが、製造する人たちはいつもこの点に苦労されています。オーガニックコットンを採り入れない工場の方の理由は価格が高いということより、原料の品質が不安定な事なのです。

化学的な処理をせず、目の肥えた現代の消費者が満足するデザインや機能性を追及する。これは並大抵のことではありません。科学万能のこの時代にNOCグループはあえて100年も前の古い“もの作り”に戻して行こうとするものです。化学薬剤を止めて天然の材料を駆使して仕上げる。それが自然環境を傷めず、人の体に安全な方法だと分かった以上このまま前に進めるしかありません。
スイスの会社が見せた正直さに応えて、今後も氏素性の確かなブランドコットンの普及に努力してゆきます。

日本オーガニックコットン流通機構 理事長 宮嵜 道男