この写真は、異物混入を理由に返品された商品です。オレンジ色の目印のシールの下にうっすらと影のように異物が見えます。
この生地に使われている糸に2ミリほどの色の付いた繊維が絡んでいます。
小売り企業の品質管理の人たちは、このような欠点を決して見逃しません。
お店の威信に掛けて探し出します。
どうしてこんなことが起きるのでしょうか?

それは購入する方々が、あまりに厳しくお店にクレームしたり返品をするからです。

「日本の消費者は、世界一厳しい目を持っている」とよく言われます。これは誇るべきことなのか?反省すべきことなのか?そろそろ考える時代が来ているように思います。
製品の特質を理解して「寛容」な眼を持つ事も、エコロジーの面、健康安全の面で結局消費者に有利になります。

消費者の意識が優秀な製品を磨き上げるというのは事実です。日本の工業製品の機能性や品質安定性は世界で最も高い評価を得ています。
一般衣料品も工業製品として捉えられています。何万着という大量の服をサイズ、形、色ぶれ、異物、織キズがなく仕上げなければ激しい競争には勝てません。メーカーは、まず小売り企業の、品質検査をパスするための手立てを行います。その「手だて」は多くの場合、化学薬剤を使って幾重にも加工処理されています。
本来天然の農産物であるコットンですから、異物はあり、色合いや質に「ばらつき」があるのは当然です。その「ばらつき」を無くすのが現代の薬剤浸け工業製品としてのコットン製品なのです。

NOCのオーガニックコットン製品は、この手法とは全く逆を行くものです。
コットン本来の性質を壊さないよう最小限の加工に留めます。漂白も染色もしないため、コットンの色はそのままですし、除去し切れなかった異物もそのまま見えてしまいます。

異物には二種類あります。
一つはコットンの枯れた葉などの破片で黒い粉に見えます。これを「綿カス」と呼びます。
もう一つは、「飛び込み」と呼び、綿花から糸そして布地になる加工工程で混じり込んでしまう浮遊する繊維です。作業員が着ている服が機械の端に引っ掛かかり、ほつれた糸が綿に混じるなんていうことも起きるでしょう。

それから、左の写真をご覧ください。
これはアフリカ・タンザニアの綿畑の極く日常の場面です。
白い綿が、色柄のある布地に包まれています。この包みは綿繰り工場に運ばれます。例えば、工場の貯蔵庫に投入される時、その時たまたまこの包みの布地の3ミリほどの糸が一本、綿に混じったとします。

するといくつもの工程を経るうちに、その色の付いた糸の破片は、ついに肉眼では見えないくらい細かい繊維に分解されて拡散します。
色のある異物の繊維が何百キログラムの紡績糸の中に広く分布してしまいます。
異物除去の工程もありますが、ミクロン単位のこのような異物は、到底取り除けません。

以上のように天然物を、人の手で野外又は、開放された工場空間で作業する場合、異物の混入を避けることは不可能です。そこで、一般の綿製品は、異物を理由に返品されては困るために漂白などの化学処理を念入りに行うわけです。
NOCのオーガニックコットン製品は元より漂白せず、そのような欠点を隠さない生成りを尊重しています。これは製造メーカーにとっては大変不利なことなのです。織りや編みの機械やその周囲の清掃、異物除去を念入りに行うことが必要です。

生成りの製品は、化学処理がないため、安全性が高く、綿の本来の風合いを楽しむことができるということから、近年「生成り」の製品を喜ぶ方々が増えています。この方々は以上のような異物混入に対して「寛容」になっていただきたいと思います。
極くわずかな異物のある製品を不良品としてみるということになるとその部分を切り捨てたり、立派な製品が廃棄されたりと大きなロスとなります。メーカーはこのロス分も全体のコストに織り込まなくてはならなくなります。結局価格は上がり、消費者にとっての負担になります。そして資源やエネルギーの無駄、過度な化学処理による汚染にも繋がります。
綿に限らず農産物の食品でも同じことで、規格にあまりにこだわり、無駄に廃棄している事実があります。これからの消費者は、理性的に製品の特質を理解して行くことが大切です。

日本オーガニックコットン流通機構 理事長 宮嵜 道男