農薬の殺虫剤は、戦争の兵器として使われたりして殺傷力を進化させてきています。

害虫は世代を重ね、抵抗力をつけるので、益々毒性を強化する研究が続けられています。
近年では、とうとう遺伝子レベルまで手をつけて、命の仕組みそのものに影響させるようになってきています。

害虫も動物も我々人間も地球に住む生命体は、形は違えど皆、同じ生命の仕組みで生きています。
そして地球を取り巻く大気で逃れられない封鎖された空間に生きています。
命に危険な物質は水や空気に運ばれて、確実に私たちの体に入り込み作用していきます。農薬が使われる農村だけではなく都会に住む人たちも、決して他人事ではありません。

ロサンゼルス・オリンピックに沸いた1984年の12月3日に、インド、マディアプラディッシュ州(Madhya Pradesh)の州都ボパール市(Bhopal)にあったアメリカの農薬企業ユニオンカーバイト社とインド資本の合弁会社の工場が未曾有の惨事を引き起こしました。

「セヴィン」という名の殺虫剤の生産中に猛毒のイソシアン酸メチルMICが40トンも流出して、風に運ばれ当時の推計で死者二千五百人、50万人もの人々が影響をうけました。被害者の大多数は、工場付近に住む住民でした。

その後、詳しい調査が進んだ2010年6月24日付けのロンドン・エコノミスト誌では、なんと死亡者数2万5千人、後遺症被害者はなんと10万人と発表しています。

先の福島原発並みの威力があったということです。

ボパールの化学工場事故の被災の様子

その後農薬の怖さを目の当たりにして、殺虫剤を使わないインドの伝統的な農法も見直されました。
その一つにニームがあります。

ニームはインドに自生している木(栴檀の木の種類)で葉などに強烈な苦味を持っています。この作用を活かして防虫剤に使おうと考えました。

ところが、1995年にアメリカの企業がニームをアメリカに持ち込み、特許を申請しました。

科学技術自然資源研究財団(Resarch Foundation for Science,Technology and Ecology)のヴァンダナ・シヴァ氏は、35カ国の200以上のグループと協力して、特許取り消し運動を展開して5年の係争の末、取り消しという勝利に結び付けました。

このような卑劣な行為は、現在でもアメリカの巨大企業モンサント社が、遺伝子組み換えの種を使って、いわれのない訴訟を起こしてインドの農民を苦しめています。

現在でも、インドの農業において、農薬の害により、年間2万人の人々が死亡し、300万人が慢性疾患に苦しんでいます。

この地上で、命に関わる最も重要な農業をこのような国際的な巨大資本の損得だけの餌食にしてはなりません。

蟷螂の斧と言われようともオーガニックの運動は、まさにこのような、とてつもなく大きい農薬の企業組織との「闘い」とも言えます。

その闘い方は、ひたすら生活者・利用者に理解してもらうよう伝えることです。

消費者の日々の買い物が未来を変えます。
安全な次世代をつくることへの「投票」です。

平成24年9月28日
宮嵜道男
NPO日本オーガニックコットン流通機構