ISEP環境エネルギー政策研究所が、10月20日に、「再生可能エネルギー地域間連携セミナー」、11月2日には「グリーンエネルギー新市場の最新動向とグリーン電力の活用方法」と題して講演会を行いました。両方とも立ち見が出るほど大盛況で多くの事業者の関心の高さに驚きました。

NOCとしても環境問題に携わる立場からエネルギー問題には注目していて、NOCメンバーの皆さんに自然エネルギーの拡張の支援をしていただきたいと考えています。

以下の文章も、ISEP所長 飯田哲也さんに監修していただきました。

イギリスの環境主義者で、画期的なガイヤ理論を打ち立てたジェームズ・ラブロックは、2004年に

地球温暖化の脅威から人類が助かるためには原子力発電しかない。

と未来学者としての主張を始めました。

それはあまりに唐突な結論で、ラブロックに心酔していた環境運動家たちは一様に後ずさりしたものでした。

ラブロックの予測した未来とは、

このまま化石燃料を使い続ければ21世紀末には、二酸化炭素の影響で、地球の平均気温が上がり、世界のほとんどの地域が居住不可能となり、農業は崩壊する。

というもので、残された時間はなく、直ちに二酸化炭素排出の少ない原子力発電に転換すべしというものでした。もはや風や太陽光による発電などと悠長に構えていたのでは、到底間に合わないというものでした。

今年・2010年、幸いな事にラブロックの予測が杞憂に過ぎないということが、はっきりとしてきたようです。

世界のエネルギー生産の構成は、オイルショックの1973年当時50%を占めていた石油は2006年には36%まで縮小し、石炭が29%、天然ガスが23%、原子力が7%、自然エネルギーが5%程度となっています。

自然エネルギー白書2010(自然エネルギー政策プラットフォーム作成)」によると、今日、欧米先進国や中国を中心に、自然エネルギー発電への転換が驚異的なスピードで進められていると報告しています。

  • 世界の自然エネルギー発電は、8000万kwも増加しましたが、そのうち中国が3700万kwを占めるという勢いを見せました。中国の風力発電は特に凄く1380万kwと倍増しています。
  • 世界の風力発電量は1億3000万kwとなり、原子力発電の3分の一にまで迫ってきました。数年で原子力を追い越し、40万人の雇用を創出するとされています。
  • 2007年から2008年の世界の自然エネルギー発電の推移は、風力発電は29%、太陽光発電は70%、太陽熱利用は15%、エタノール・バイオディーゼルは34%、小水力発電は8%と軒並みに増加しました。
  • アメリカとEUでは石油、石炭、天然ガス、原子力の従来型の発電設備より自然エネルギー発電の設備の方が上回りました。
  • 世界の自然エネルギーに投資された金額は、2002年に71億ドルだったものが2008年には1,189億ドルとなんと16倍にもなりました。
  • 世界の自然エネルギー発電への投資額は15兆円規模で今後更に20~30%は確実に伸びてゆくものと見られています。

近代において社会を動かしている論理は、経済やコストであり、いかに利益が上がるかがすべての出発点にあります。

地球環境保全には自然エネルギーの利用がいいという事は、誰でも十分に判っていても採算が合わないという理由が立つと、環境を汚し枯渇してゆく化石燃料の石油ですがその争奪戦に明け暮れてきたのです。

ところが原油の価格が高値で安定してしまって、相対的に自然エネルギー発電のコスト・採算が見合うようになると一気に意識の流れ、お金の流れが変わってきました。

日本は大体、年間13億バレル(1バレルは160リットル)の原油を輸入しています。

2000年以前まで1バレル当たり20ドルぐらいだったものが、10年経って90ドルにも値上がりしてきています。1ドル当たり90円で換算して計算してみると、その差額はなんと910億ドル、約8兆円にもなります。
化石燃料全体では、1998年にはわずか5兆円の輸入額が、2008年には23兆円、GDPの5%を占めるに至っています。

この23兆円を自然エネルギーの設備に使っていたら、どれだけ日本のエネルギーコストを長期に亘って下げる事ができたでしょうか?
エネルギー転換のような重大なテーマは、政権の決断がなければ起きえません。

例えば、2004年まで日本の太陽光発電の技術は断トツで、質・量共に世界一を誇ってきましたが、旧政権の無策のため、伸び悩んでいるうちにドイツ政府は買い取り制度を決断し、積極的に推し進めたため、一気に追い抜き、年毎にその差を広げて、今や日本の8倍の発電量を実現しています。

政策の失敗はこれ程の大差になることをよく認識する必要があります。

日本でも今年、政権交代があり、利権の構造が変わり、従来にない自由闊達な地方行政と民間の協力関係ができるようになりました。

これから自然エネルギー発電量は指数関数的な上昇曲線を示してゆくものと思われます。

良い例が、秋田県の「風車1000本計画」があります。

実現すると800億円の年間売り上げとなり、秋田米の売り上げに匹敵します。新たな産業が起き、経済は活発化してゆきます。

事業として成り立つような仕組みさえ作れば、資金は集まり、関連事業者は技術とコストを競い、進歩の速度が加速され、脱化石燃料社会が早期に実現してゆきます。

日本は、昔から方向が定まり、ひとたび走り出すと驚異的な成果を実現してきた国です。
大いに期待したいものです。

日本は2020年に、自然エネルギー発電を10%にする目標をもっていますが、EUの20%、アメリカの25%と比べると、もっと高い目標を掲げてもいいのではないかと思います。

10年先の2020年には世界の自然エネルギー市場は、自動車産業に匹敵する150兆円を超える市場になると期待されています。それでも全エネルギーの10%程度ですので、前倒しで勢いをつけなくてはなりません。

欧州では、40年先の2050年までに、電力やエネルギーの全てを自然エネルギーに完全に転換しようというシナリオが今年に入って、立て続けに出てきました。

日本でも、環境エネルギー政策研究所(ISEP)日本自然エネルギー政策プラットホーム(JREPP)のシナリオでは、石油は0%、風力10%、太陽光18%、バイオマス14%、地熱10%、水力15%そして原子力8%、天然ガス20%、石炭5%くらいの比率になると予測されています。

自然エネルギーを支援してゆこうというグリーン電力証書の取り引き量が2008年度に1億6000万kw/hとなり、前年比100%という急速な普及を示しています。

環境保全の中心問題は、なんと言ってもエネルギーです。
NOCが目指すエシカルな社会では自然エネルギーを背景としていなければなりません。
今後も注目しこの運動を支援してゆきましょう。

日本オーガニックコットン流通機構
理事長 宮嵜 道男