「オーガニックコットン生産がのびない、なぜ?」コラム 2019 No.18 

オーガニックコットンの生産が伸びない。なぜ、なぜ、なぜ?


TE(テキスタイル エクスチャンジ)の調査で、2016年のオーガニックコットン生産量は10万7,980トンで前年比4%減と報告しています。

一般の綿花が約2,500万トンとして0.4%という希少な存在に甘んじています。

これに対して世界のオーガニックコットン製品市場は、毎年10%程度伸びて来ています。

じゃあなぜ、もっともっと農家の皆さんはオーガニックコットンを作らないのか?という疑問が湧きます。

低いところで、需要と供給がバランスしてしまっているということでしょうか。

売値が高いから売り難いという見方もあります。

これは、価格に見合う「価値」を認めてもらえていないということです。

オーガニックコットンの価値を見直して、どのように知らしめてゆくか工夫の余地が、たくさんです。

価格は、当然の事、オーガニックコットン製品が多く売れて行けば、生産効率が上がり、コストが下がり売値が下がり、さらに市場が広がることでしょう。

「ニワトリ・卵の関係」でどちらかの条件が先行すると市場が一気に拡大します。

各メーカーはこの厚い壁を突破すべく、買いやすい価格を目指して意欲的に努力されていますので早晩良い状況に転換すると思います。

もう一つ、オーガニックコットンの栽培が広がらない理由として農家の皆さんの事情があります。

農家の皆さんは、農業をなりわいとしている訳で、春に種をまいたら秋にどれだけ収穫出来て、いくら手元に現金が残るかが最大関心事です。

多少、極端な表現ですが、自然環境がどうのこうのと考えるのは、ごく少数でしょう。

そういうことを唱えている人は、農業に従事している人たちではありません。

うるさい規定が、いろいろあって手続きが面倒なオーガニックコットンを栽培するのは、一般の綿よりも高めに売れるからです。

また自分たちが農薬の健康被害を受ける立場であることを認識しているからです。

NOCが支援しているbioReプロジェクトでは、有利な買取価格だけでなくいろいろな 生活支援が受けられるような仕組みが出来ています。

10年先、50年先、孫子(まごこ)の世代のために多少不利でも環境保全のために汗水を流すというような高い意識を期待するのは、生活水準が私たちとは大きく異なりそれは、こくな話です。

では、どうするのか、未来に思いをはせられる欧・米・日本など先進国の消費者が高い見地から地球にとって、未来にとって最適な購入という選択をすることしか方法がありません。

世界の繊維生産量が、ざっと9,000万トン、その内約70%の6,000万トンが石油化学合成繊維です。

廃プラスチック問題が叫ばれるようになりましたが、ストローやスーパーの買い物袋の問題ではありません。

日常、使用している生活用品にどれだけプラスチックが使われていることか、見直す必要が出て来ています。

一昔前までは、木質だったり、陶製だったり、ガラス製や紙製だったものが、見事にプラスチック製に成り代わっています。

背景には、石油精製の過程で 生成されるナフサをプラスチックとして有効利用の一つにするという時代的な意思が あったことは、事実です。

廃プラスチックの環境汚染問題の重要性がはっきりした以上、天然素材や生物分解性の素材に早急に戻してゆかなくてはなりません。

化合繊からオーガニックコットンの時代の到来です。

このように一昔前の天然素材の知恵を思い出す時代が来ています。

綿花は地球上の赤道をはさんで北緯45度、南緯35度の地域で、雨が少なく乾燥して、日照時間が長い地域なら栽培できます。

こういう地域は広大で、合成繊維から天然繊維綿花への回帰のムーブメントが起きても十分応えられる潜在力があります。

総じて言えることは、オーガニックコットンの価値をさらに広報し、需要を喚起することです。

需要が起きれば、栽培が盛んになり、生産量が増えてゆくのは自明のことです。

文責:日本オーガニックコットン流通機構 顧問 宮嵜道男 5.30.2019