コラム 「CODEXを胸に抱える銅像」2020 NO.2

CODEXを胸に抱える銅像

桜の花の全盛期に哲学堂公園を訪れました。お化け博士と愛称された哲学者の井上円了が開いた公園で、満開の桜を楽しみながら、南側に流れる妙正寺川に向かって石段を下りてゆきました。
小さい橋を渡ると、いくつもの銅像が並んでいました。

歴史上の重要人物が並ぶ中に、東ローマ帝国の皇帝のユスティニアヌスの像がありました。何気なく見上げてみると大事そうに本を抱えています。その本にはCODEXと彫られていました。

コーデックスと云えば、国際連盟のFAO(国連食糧農業機構)とWHO(世界保健機構)のコーデックス委員会で、食品の国際規格のことです。
1962年に「自由貿易の推進」と「消費者の健康保護」のための世界共通の基準が作られました。この中に有機食品の基準や認証ガイドラインもあります。この考え方は、1972年IFOAM(国際有機農業運動連盟)に繋がり、オーガニックコットンの生産の基準になってゆきました。

コーデックスは、古代ローマ時代の法典を意味しています。
コーデックス・法典の編纂を命じて成立させたのがユスティニアヌス帝で紀元483年から565年まで82年の生涯を生きた皇帝です。

ローマ帝国は、地中海沿岸全域と東は現在のトルコ、イスタンブールまでを支配していましたが、法律が一定ではなく事情に合わせてコロコロと変わり、その時々の権力者の都合で変わってしまいました。これでは、広大な支配地を収めることは出来ず、しっかりしたコーデックス(法典)が必要になりました。ユスティニアヌス壮年期の46歳の529年に公布、施行しました。ユスティニアヌスはとにかく良く働いた皇帝で、精力的に政務に励み「眠らない皇帝」と呼ばれていました。

紀元前1792年のメソポタミア文明、バビロニアのハンムラビ法典、そしてこのローマ法典、ずっと下って近代法の元となった1804年のフランス、ナポレオン法典を三大法典と呼んでいます。

野生動物の世界では、弱肉強食の原理で命が循環していますが、人間社会も歴史を辿ると強者が弱者を支配した時代が殆どでした。

近代に向けて弱者が不利にならないように法律が整備されてきました。法律は常に公平で正当なものではなくてはなりません。

NOCのオーガニックコットン認定の考え方も、アレルギーなどの過敏な体質の方々にとって 安全かどうかをベンチマーク(基点)に設定しています。
その意味で、世界でも最も厳しいコットン製品安全・エコロジー基準と云えます。

文責:日本オーガニックコットン流通機構 顧問 宮嵜道男 5.16.2019